おれのモテ塾 りょうた塾長とは

ありがとう一万回編その1 ありがとう【小さな種】。 それは確かに芽吹きの光を待ちわびる。

嘘も100回言えば誠になる

こんな言葉も知ってか知らずか。
スマートフォンの録音アプリに吹き込んだ、

「俺はイケメンである。ありがとう。」

というフレーズをリピートで繰り返し聞いた男。
それが私りょうたという者だ。

一日約3時間くらいか?
嘘は100万回聞いても誠にならず。

私の顔はジミー大西似の決して美男子とは言えない顔のままだった。

「俺はイケメン」が苦痛になった。

しかしそんな中にも光がある。
3月。つぼみばかりの桜の木。
たった1つ。真っ先に咲いた一輪の星。

これがありがとうだ。


●毎朝30分読書の習慣をつける
→感性が磨かれて仕事もバリバリ。

●4日に一回ジムに行って筋トレをする
→体が引き締まって仕事もプライベートもばっちり。

●毎日1人にナンパする
→トークが上手くなり女にモテモテ。

よしやろう!
やるぞ!

3ヶ月後には仕事バリバリ、体もばっちりのモテモテ男だ!

読書。

うーむ。

星のような輝かしい習慣たちは土くれの中に埋もれていきました。

温かな泥沼につかり切ったぼくたちには、そんな星々は眩しすぎるのだ。

どんなに素晴らしい知識でも慣れないものを取り込むことには大きな違和感をもたらす。

それはイボのように腫れた口内炎のようなものだ。

咀嚼の仕方を変えられないぼくたちは食事の度にイボを噛み締め腫れ物を大きくしてしまう。

拭えない違和感。

素晴らしい習慣も最初は違和感しかないのだ。

だから階段を用意するんだ。

違和感という段差を超える小さな小さな階段を。


ステップ1
~小さな感謝から~

その日のりょうたはいつものように緑のバスに乗る。

通勤時間帯のバスはいつものように走る。

中ではたくさんの柳の木が揺れる。

ゆらりゆらり。

家族や生活を守るため。今日も柳たちは揺れる。

バスは工業団地を抜け、一陣の浦風が通る浜辺の終点が見えてくる。

その日彼には決めたことがあった。

シュー。

鈍色の空気が吐き出される。
終点だ。

どろりどろり。

のっそりとした面持ちで人びとがバスから出て行く。
外からは港特有の生暖かな風が人びとを出迎える。

中の柳林が減って来た時。
彼は同じように浦風の吹く外に向かう。

鉄色の顔を動かさない運転士が見えてきた。

そんな物をいつもは全く意識してこなかった。

意識せずに通り過ぎてきた。

でも今日は違った。

「あっありがとうございます…」

少しばかり桜色のさした顔で彼は言った。

その時、運転士の顔は鉄色なんかではなく、
彼となんら変わらない人の色をしていた。

外の蒼穹は浅葱色【あさぎいろ】のやさしい青でした。


「ありがとう」の最初の最初。

最初のステップはバスの運転手さんやコンビニの店員さんが相手でした。

中には仏頂面を崩さない人もいると思います。

でも少しずつ少しずつ。

人のやさしさを感じるようになってきます。

何気ない日常の一コマ。

「ありがとう」

この何の意味のない一言によってあなたは、
ほおずきのような暖かさを感じるようになるでしょう。

私の胸に灯ったほんの小さな暖かさは。
少しずつ少しずつ、燃え広がりました。

この火はたき火のようにみんなを温める優しい炎です。

が、ここで壁。

男をさえぎる、
杉の大樹のような壁はまさしくそり立つ壁。

頂への最初の関門だ。


「ハイボール1杯ください!」

向日葵のような顔で注文をつげるりょうた。

「あっ、はい。」

「あとラーメンと餃子と春巻もください!」

かまわず向日葵は咲き誇る。
陽炎の花が周りを飾る。

「はい。はい。」

そんな向日葵は見向きもされず、
手折られていく。

「ありがとう」の最初の壁はいやな思いをした時です。

  • この記事を書いた人

りょうた”元”塾長

「元」非モテの塾長。30年を超える非モテ人生の果てに現在の彼女と出会い、当たり前な幸福を手に入れる。自身の非モテ人生によって培われた感性で恋愛について雑多に語る文筆家。

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