Ⅰ
『僕の名前はデイッティ。大学生だ。』
『僕にはコンプレックスがある。
それはこの幼い顔だちだ。』
彼は昔からそれなりに女子との交流があった。
そんな彼が恋をして、愛を打ち明けるのは自然の流れだった。
「ごめんね、ディッティくん。ディッティくんは私にとってかわいい弟みたいな存在なの……。」

いちよ
『かわいい弟』の一言は、彼の臓腑にふつふつとしながら溶け出した鉛のように残り続けていくのだった。
Ⅱ
こうして今に至る。
「ほら金髪さんはえぐおくんと付き合ってるみたいだよ!むふふ」
友人のジミーは聞き苦しい笑い声混じりにこう言った。
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いちよ
視線の先には、浅黒い肌からタンクトップを通して伸びる腕を絡ませながら登校する金髪が揺れていた。
「アレ、ディッティ君は金髪さんのこと好きだったんだっけ!ごめん!」
「いいよ、やっぱり僕は子供みたいな顔だから恋愛対象外なんだし」
「ディッティ君は顔は良いんだし、もっと積極的に行けば良いのに」
「僕の顔が良い?冗談じゃないよ!
いっつも弟か子供かペット扱いだよ!」

いちよ
自ら持たぬ差に敗北感を感じ、居たたまれなくなった彼は脱兎のごとくその場から立ち去ってしまった。
「ありゃりゃ、顔のことはディッティ君の地雷だったみたいだな。
かわいい系なのにもったいないなぁ」
Ⅲ
『顔が良いなんて嘘だ。
もっと強く、かっこよくならなきゃ!』

彼が彼の魅力を理解するのはまだ先の話だった。