Ⅰ
『僕の名前はディッティ。
高校3年生だ。
僕は今、部活のみんなの応援を一身に受けながらこれから飛び越さないといけないバーを見ていた。
3年間の集大成。』
今までひたすら頑張ってきた成果、見せてやる!
Ⅱ
彼は跳んでいた。
晴れの日も雨の日も風の日も跳んでいた。
「あーあ、足ひねっちゃったわー。テーピング巻いてよ!」
と少し走れば短距離走トラックで座り込む男に、女は甲斐甲斐しく世話をする。
こうしてずっとお話に花を咲かせるご両人をわき目に、僕はいつものようにバーを跳んだ。
『僕はこの部活でのエースなんだから、女の子にかまけちゃいられないよ!』
と強がる彼は意中の相手は得られず、その葛藤を練習にぶつけていた。
その目線の先にいた男を目の敵にするように。
Ⅲ
そんな日々も終わりを告げた。
3年間の毎日を掛けた一跳び。
カランという音が静かに響いた。
『結果は4位入賞。全国には届かなかった』
男の目はウサギのようだった。
それを目にした彼の目はやっぱりウサギたった。
悔しいが、モテるやつにはいい奴が多い。
Ⅲ
「おーいディッティくん!早く打ち上げ行こうぜ!」
と馴れ馴れしく肩を組んでくる男をやっぱりディッティは好きではなかった。
だけど結局組み返してしまう肩。
彼らの未来は広がっている。